そもそも「クロスバイクとは何か」に明確な定義はありません。
何かしらの(公的な)自転車業界団体でクロスバイクが定義されているわけでもありませんし、法的な規制もありません(必要ないので)。
そのため、メーカー各社もクロスバイクとされるものの呼び名として様々な名称を用い、それがさらに、統一呼称をカオス化させています。
- ハイブリッド・バイク
- フィットネス・バイク
- クロスオーバー・バイク
- トレッキング・バイク
しかし、世のメディアが口を揃えて言うように「クロスバイクには明確な定義は無い」のでは、クロスバイクについて公開記事を書いている私の責任が果たせないと思い、自分なりの定義を考えてみました。
判を押したように、同じことを言うのもダサいですしね(笑)
私的な「クロスバイク」とは
ここからは私の主観と私の持ち得る知識を動員して思考した結果です。
もし、誤りがある場合は、ぜひコメントにてご意見いただけると助かります。
クロスバイクを定義するにはまず、クロスバイクが何のために使われるべきものなのかを、明確にする必要がありそうです。
クロスバイクの目的
- 目的 : 乗ること(移動や輸送ではない)
- 想定される走行シーン : 街乗り。舗装をされた道路、歩道、または滑らかな未舗装道路
クロスバイクは「ロードバイク」と「マウンテンバイク」のハイブリッド車であるとされていますから、上記の目的や利用シーンには間違いはないと思います。
目的のうち「移動」を除外した理由は、通勤・通学には適さない仕様であるためです。
詳細は以下の定義でまた触れていきます。
純粋に「乗ること」がメインであり、つまりは運動・フィットネス、または乗ることによる気分転換・レクリエーションなどが、クロスバイクを利用する動機であるといえるでしょう。
なお、ロードバイクやマウンテンバイクの目的を設定するとすれば
- ロードバイクの目的:速く乗ること、遠くまで移動すること
- マウンテンバイクの目的:悪路を踏破できること
となるでしょうか。
続いて、外見的な特徴の定義に移ります。
いずれも、上記の「目的」を達成することを前提としています。
クロスバイクのタイヤ特性
- タイヤ径:比較的大きい。700mmや28インチ。
- タイヤ幅:28mm~35mm
- トレッドパターン:オールコンディションタイプ
クロスバイクは「様々なコンディションで乗ること」を想定するため、タイヤはロードバイクに比べ幅広のものが求められます。また同様の理由で、トレッド(溝)パターンは、溝の浅い「スリックパターン」よりも、オールコンディションタイプのトレッドとなります。
23mmのタイヤ幅やスリックタイヤでは、車道のような路面状況の非常に良い環境でしか性能を発揮できません。
また逆に、グラベルロードやマウンテンバイクのような太径のタイヤではグリップが増す一方で速度が失われ、わざわざ「クロスバイク」をチョイスする理由がないと考えます。
クロスバイクのハンドル形状
- ハンドル形状:フラットバーハンドル、ブルホーンハンドル
- グリップ形状:ノーマル、エルゴグリップ、ブルホーングリップ
ロードバイクとの違いで引き合いに出されるのがハンドルの形状ですが、やはりクロスバイクにはフラットバーハンドルが適していると考えます。
ロードバイクの代名詞、ドロップハンドルの最も大きな利点は、上体(上半身)を低く構えることで前方投影面積を小さくできることです。これは「速く走ること」が目的であるロードバイク(ロードレーサー)だからこその特性と言えます。
クロスバイクのシフト機構
- ギア段数:6、9、18、27など(前方シングルか、前後ギア付き)
- シフトレバー:グリップシフト、トリガーシフト
クロスバイクは市街地での利用を想定するため、前後ともに変速機構が必須とは考えません。しかし、フィットネス・ユースを考えるのであればケイデンスの一定維持が理想的であり、ある程度の変速はあってしかるべきものだと考えます。
シフトレバーはどちらでもよいと思いますが、グリップのほうがよりカジュアル(お値段も)、トリガーのほうがより専門的(お値段も)という印象です。
クロスバイクのサスペンション
- フロントフォーク・サスペンション:なし
クロスバイクは比較的平地の多い市街地での利用を想定するべきです。また、乗ることを優先するため、上下運動が発生してしまうサスペンションは不要と考えます。
ただし、歩道内に自転車の通行スペースが整備されているような地区では、数センチの段差を超えることもあると思います。その場合は、クロスバイクではなくマウンテンバイクを買うほうが良いのではないでしょうか。
クロスバイクのサドル
- サドルの形状:前後に長く、幅が狭い
- サドル下のサスペンション:なし
- サドル座面のクッション性:低い
クロスバイクは「乗ること」を優先するため、両足の可動域を制限しかねないような幅広なサドルは不適だと考えます。
また、クロスバイクはサドルに「座る」というよりも、「腰掛ける」「もたれかかる」といった、少し体重を預ける程度の座り方となります。また前項の通り高すぎるクッション性は走行の妨げとなってしまうため、過度のクッション機構は不要です。
クロスバイクのフレーム
- フレーム形状:ダイヤモンド・フレーム
- ヘッド角・シート角:比較的大きい(立っている)
- フレームの素材:スチール製、アルミ製など
フレームはスタッガード型など乗降性を意識したものは、「走行」自体を目的としたクロスバイクには不釣り合いであると思われます。ヘッド角(シート角)については、寝すぎていると操作性が低下してしまうため、一般的なスポーツ車の角度(70~75度)であれば十分であると考えるべきでしょう。
フレーム素材は特に重量に影響するが、クロスバイクの動機を考慮すると必ずしも「軽量さが最重要」とは考える必要はありません。むしろ高価なカーボンフレームは不要かもしれません。
クロスバイクの泥よけ等
- 泥よけ:定義しない
- リアキャリア:定義しない
- フロントキャリア(カゴ):定義しない
- チェーンカバー:定義しない
これらはクロスバイクの定義には不要だと考えます(クロスバイクに不要ではなく、クロスバイクであるかどうかの条件になりえない)。
クロスバイクの目的は「走ること」ですが、これらのオプションが付いたところで「こんなのはクロスバイクじゃない」と否定することもないと考えるためです。
クロスバイクの需要も増え、またニーズも多様化しているため、自転車専門店でさえ「カゴ付き」のクロスバイクを見かけることがあります。通勤・通学にクロスバイクを求めることもあるでしょう。
まとめ
この記事では、私の主観と知識から、クロスバイクの特徴づけ、定義づけを行ってみました。
まとめると、クロスバイクとは
- タイヤ径:700c、タイヤ幅:28~35mmのタイヤを持ち、
- フラットバーハンドルであり、
- 6段変速以上のシフト機構を持ち、
- サスペンションやクッション性はなく、
- 長く幅の狭いサドルがあり、
- オーソドックスなダイヤモンド・フレームの
- 「乗ること」を目的とした自転車
であるといえます!
もちろん、上記に挙げた条件に沿わずとも、素晴らしいクロスバイクはあると思います。
「明確な定義がなされていない」というのは確かにあるかもしれませんが、そもそもクロスバイクとは多様化したニーズに応えるように登場した存在であり、そんなクロスバイクに定義を行うこと自体が、無理のある話だったのかもしれません。
今、自転車選びに悩んでいる方には、何かの参考や考えのヒントになればと思います!